確執のあった父からの合格ケーキが、私の人生を変えた話

福岡県在住29歳女性の明日香です。現在妊娠中で専業主婦をしています。
私は幼い頃、父との関係に悩んでいました。あるきっかけで父に愛されていると知った時のストーリーを執筆します。

ほとんど交流がなかった父と私

私の父はとても不愛想で、家事や育児に非協力的な人でした。
昭和の九州男児という感じで父が台所に立っている姿を見たこともなければ、あまり笑った顔も見た記憶がありませんでした。

いつも怒った顔をしていて、100点満点のテストを見せても褒めてもらえる事はなく、私は父が苦手でした。

行事にも積極的に参加する事はなく、運動会などでお友達のお父さんが参加しているのを見て本当に羨ましく感じました。

私は父に愛されていないのだなと幼心に感じていました。

受験でイライラしてる時に父と二人で生活することに

思春期を迎え、私は高校受験を控える年になりました。
その頃になっても父との関係は変わることなく、会話は殆どなくなっていました。
朝時々顔を合わせる程度で、挨拶をしていたかどうかも覚えていないほどです。

私は吹奏楽部に所属しており、どうしても進学して入部したい高校がありました。
ですが、その高校は私が志望するにはレベルが高く、先生にも難しいと言われていたほどでした。部活を引退した後は毎日塾に通い、塾から帰れば部屋にこもって自習と、勉強漬けの毎日でストレスが溜まっていました。

そんな時、母が祖父母の家に数日間泊まりに行く事になり、勉強があった私は父と家に残る事になりました。

私はいつも通りの毎日を過ごそうとしていましたが事あるごとに父に呼び出され、勉強の手を止めて父の部屋に行くと「お茶を淹れろ」「食事はまだか」など言われ、本当に腹が立ちました。
文句を言いたかったのですが、幼い頃から怒っている姿しか見ていなかったので、言い返すことも出来ずに渋々従っていました。

父との衝突

2日程経った時にまた呼び出され「コーヒーを買って来い」と言われました。

私は塾に行く時間が迫っていたので、その事を伝え「自分で買って来て」とお願いしました。
すると父は「俺にレジで金を払わせるのか」と激怒したのです。言っている意味が分からないのとそれまでのストレスから私も爆発してしまい、初めて父に言い返しました。

興奮しすぎて何と言い返したか覚えてないのですが、初めて口答えした私に父が唖然とした顔をしたのはハッキリと覚えています。
そのまま家を出て、塾へ行きましたが私の怒りは収まりませんでした。

帰宅してから父と顔を合わせた時、父が何か言いたげな顔をしていましたが、私は「今まで何もお願いしたことなかったけど、私の邪魔をしないで!」と冷たく言い、それから自室から出ることもなく、父から呼び出されることもありませんでした。

帰って来た母からは、「お父さんは恥ずかしがり屋だから一人で買い物に行ったり、レジでお金を払ったりするのが出来ないんだよ」と言われましたが、大の大人が一人で買い物に行けないなんて意味が分からない。そんな事を言う母にも怒りが沸きました。

理解できない母親の言葉

この事がきっかけで少し時間をずらして登校したりして、父と顔を合わせないようにするようになりました。
会話もなく、顔を合わせる事もなく私の受験が始まりました。
何とか希望の高校に合格し帰宅してから母に伝えると、母がすぐに父に合格したと連絡をしました。

どうせ何も反応しない父には急いで言わなくて良い、と母に言いましたが、母は「お父さんはずっと気にしていたよ。あの人は恥ずかしがり屋だからね」と言うのです。

私には母が以前から言う、父が恥ずかしがり屋というのが全く理解できませんでした。

それを母に伝えると、「お父さんはいつも怒っているんじゃなくて照れてるんだよ。あなたの事を大切に思っているけど、大切にし過ぎてどう接したら良いか分からない不器用な人なんだよ」と言われました。

初めて母から聞く父の話は私が知っている父とは重ならず、「いつか分かる時が来るから」という母の言葉も、全く理解できませんでした。

父の変化と私への影響

ですがその日の夜、帰宅した父がケーキを買って来たのです。
私は本当に驚きましたし、一人で買い物に行けないと長年言っていたのを知っている母の方が驚いている様子でした。

ふと父の顔を見ると、はにかんだように笑っていました。

おめでとうと一言だけ言って差し出されたケーキ、あの時の味は忘れられません。

その時、私は父の顔を久しぶりに見たということに気付いたのです。

怒った顔しかしないから父のことは見たくないと、今までずっと見ないように避けてきたことを思い出しました。母の恥ずかしがり屋で、照れ屋で不器用な人だと言った意味が少し分かったような気がしました。

合格祝いのケーキがきっかけで、父とも少しずつ話をするようになりました。
私も誰かのお祝いの場を幸せにするお手伝いがしたいと思い、高校卒業後はパティシエの道へ進む決意をしました。

父がケーキを買って帰らなければ、きっと違う職に就いていたと思います。

不器用な笑顔

現在は妊娠した為、仕事は退職しています。
先日、子供服を見て父が嬉しそうに笑っている顔を見て驚きました。

今見ると笑っていると分かる父の顔が、私が子供の頃怒っていると感じていた顔だったのです。

母に話すと「お父さんは恥ずかしがり屋で、照れ屋で不器用だから笑顔も下手なんだよ」と笑っていました。

母から笑った顔が怖いと聞いた父が、孫に嫌われないようにと鏡に向かって笑顔の練習をしている姿を見て、思わず笑ってしまいましたが私は確かに子供の頃から父に愛されて育ったんだなと感じました。

こういう人だ、と決めつけない。

あの時の合格ケーキは今でも忘れられない思い出です。

私が父はこういう人だと決めつけずに接する事が出来ていたら、もっと楽しく過ごせたのかなと思います。

幼い頃の自分にもし伝える事が出来たら、お父さんは怒ってないかないよ、あなたの事が好きだよと伝えてあげたいです。

親は何があっても子供の味方でいてくれる、とても大切な存在だと気づくことが出来て良かったです。