乳製品アレルギーについて―代替え可能な食品を解説
2022年09月13日(公開日:2022-08-10)
今日、アレルギー症状に悩む方はたくさんいらっしゃいます。アトピー性皮膚炎や花粉症を含むアレルギー性鼻炎、気管支ぜんそく、薬剤など。なかでも、食物アレルギーは、1歳未満の赤ちゃんで最も多く発症することが知られています。その2割以上の原因を占めるのが牛乳です。乳製品のアレルギーについて、代替え可能食品の紹介を含めて解説します。(※1)
アレルギーとは。症状のはじまり
私たちの体を守ってくれる仕組みである「免疫」の働きが異常を起こし、特定の物質や食品によって症状を起こす状態が、アレルギーです。その症状には、くしゃみ・発疹・呼吸困難などさまざまな種類があります。
これらの症状は、乳幼児期にアトピー性皮膚炎の症状から始まり、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と次々と異なる時期にアレルギー症状が出現してきます。これを「アレルギー・マーチ(atopic march)」と呼び、食物アレルギーはこのうち最初に認められるのがほとんどです。(※2)
食物アレルギー
アレルギーマーチのうち、食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎を伴って発症することが多いことが分かっています。その発症は1歳未満の乳児でもっとも多く、厚生労働省の調査によると小児から成人まで幅広く認められています。以前ではアレルギーの報告がなかった、果物や野菜、芋類による食物アレルギーが増えてきたのも特徴です。
日本において乳幼児期にもっとも多い食物アレルギーは鶏卵によるもので、次いで牛乳となります。2歳以下に占める食物アレルギーのうち、鶏卵・牛乳で全体の5割以上をも占めるのです。(※1,3)
乳製品アレルギーで食べられないもの
食物アレルギーのうち鶏卵に続いて2番目に多く、子どもが摂取することの多いのが牛乳・乳製品です。乳児期・離乳食でも取り入れる食品ですので、乳製品アレルギーについて、気をつけるべきポイントを抑えておきましょう。
牛乳は加熱・発酵しても、ダメ
牛乳・乳製品アレルギーの多くは、牛乳のたんぱく質の「カゼイン」が原因です。牛乳200mlあたり6.8g含まれ、牛乳のたんぱく質の約80%を占めます。このカゼインは耐熱性があり、加熱してもたんぱく質の構造はほとんど変化しません。よってアレルギーの起こしやすさは変わらないのです。
また、発酵においても同様です。カゼインの成分は分解されにくいので、ヨーグルトやチーズなどに加工したものでも同じように注意が必要です。(※4)
乳製品とは関係がない「乳」の字を含む原材料
加熱しても発酵してもアレルゲンの力が落ちることはないので、「乳」を原材料に含む加工品には注意します。ただし“乳”という文字が入っているものが、すべて乳製品を含むわけではありません。
加工食品に利用される「乳化剤」「乳酸」「乳酸菌」「乳酸カルシウム」など、また「豆乳」はその名称から、乳製品と誤解されやすいのですが、牛乳とは関係なく乳製品ではないのです。「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「はっ酵乳」などの加工食品には牛乳が含まれるので、牛乳アレルギーの方は食べられません。
牛乳は特定原材料として加工食品のアレルギー表示が義務づけられていますが、この「乳」の範囲は、牛の乳から調製、製造された食品全てが対象です。牛以外の乳(生山羊乳、生めん羊乳、殺菌山羊乳など)は対象外ですので覚えておきましょう。
名称の“乳”という文字の有無だけでは、一概に食べられるかどうかを判断できません。誤食なく、食べられる食品を増やすためにも、アレルギー表示から食べられる食品と食べられないものを正しく見分けることが重要ですね。(※4,5)
乳製品の代替え食品には豆乳が便利
牛乳を使う乳製品や料理は多いため、代替え食品が気になるという方も多いでしょう。栄養面では不足しがちな栄養素を代替え食品で、料理では調理の工夫で補います。
栄養素を補う
牛乳・乳製品アレルギーの子どものカルシウム摂取量は、そうでない子どもと比較して半分ほどと報告されています。必要なカルシウムを乳製品以外で効率的に摂取することは難しいので、日々の食事の組み合わせで摂取する習慣をつけるのが大切です。
カルシウムの多い食品には、以下のものが挙がります。
- 煮干しなどの小魚類
- 青菜類
- 海藻
- 大豆製品
- 牛乳アレルギー用ミルク
手軽にカルシウムをとれるように、豆乳やアレルギー用ミルクを牛乳の代わりに料理に使用するのもおすすめです。
調理で工夫する
クリーム系の料理では、じゃがいもをすりおろしたり、コーンクリーム缶を利用したりするなどして、とろみをつけるのも良いでしょう。
代替え食品を使う
牛乳の代替え食品は、牛乳アレルギー用ミルクや豆乳、ココナッツミルクなどいくつかあります。牛乳の分量そのままを使い替えるだけと簡単です。また、牛乳を多く使う洋菓子では豆乳が役立ちます。豆乳から作られたホイップクリームや、豆乳のヨーグルトもあるので活用してください。(※5,6)
乳製品アレルギーを正しく理解して、代替え食品を上手に使おう
日本では特に小児に多い牛乳・乳製品アレルギーですが、通常、牛乳を使う加工品が全部食べられなくなるということではありません。食べることができない乳製品を正しく理解し、代替え食品を上手に取り入れて、食べられるものの幅を少しでも広げられると嬉しいですね。牛乳の代わりに豆乳を使うなど、調理の工夫も併せて楽しんでみてください。
参照:
※1) 令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書|消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_220601_01.pdf
※2) アレルギーについて | 国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/about_allergy.html
※3) 食物アレルギー – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf
※4) 原因別アナフィラキシー|食物アレルギー 牛乳・乳製品
https://allergy72.jp/cause/food/allergen/milk.html
※5) 加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック – 消費者省
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_210514_01.pdf
※6) 牛乳アレルギー|食物アレルギー研究会
https://www.foodallergy.jp/tebiki/milk/
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