発酵食品の効果とデメリット

2023年02月24日(公開日:2022-08-12)

健康に良いと言われる発酵食品ですが、その種類にはどのようなものがあるのでしょうか。発酵食品の効果を、食べ方を含めて詳しくご紹介。また、併せて知りたいデメリットも解説します。

発酵食品の効果

「発酵食品の効果」とは、微生物を含んだ発酵食品を体内に取り込むことで得られる、微生物の活動によるものを指します。微生物の特性を知り、人間の体の仕組みとうまく合わせることで、効果を最大限に引き出すことができますよ。またメリットだけでなく、デメリットの部分もよく知っておくことが大切です。

発酵の効果を活かした発酵食品とは

主に微生物の生命活動によって有機物が分解され、その結果変化した物質が生成されることを発酵と言い、これを食品に活かしたものが「発酵食品」です。
酒や味噌、醤油といった伝統食にはじまり、お菓子やパンなどの私たちの日常に密接した食品に使われるなど、その種類は多岐にわたります。

人間にとって効果的で有用なものが「発酵」であり、有害なものは「腐敗」です。

発酵食品のはじまり

発酵食品が微生物の代謝物による作用だと確立されたのは1861年。フランスの科学者ルイ・パスツールの著書「自然発生説の検討」によって証明されることとなります。

しかし、それよりもはるか昔、古代ローマ以前より発酵食品が食されていたことが、遺跡や書物などから発見されています。古代エジプト文明で有名な 「死者の書」にはビールやパンについての記述があり、さらに、約7000~8000年前のメソポタミア文明の遺跡からはワイン製造の形跡が出土しています。(※1,2,3)

この文化は世界各地で発展し、さまざまな食材と深く関わることとなったのです。 日本では、米麹が発明される以前よりどぶろくのような酒が神に捧げられ、ヨーロッパでは、ぶどうからワイン、ヤギや羊の乳からチーズ、麦からパンやビールなどが作られていました。

顕微鏡はおろか、微生物の存在さえ認識されない中でも、我々人類は発酵食品と密に接してきたのですね。

発酵食品の種類

発酵食品にはさまざまな種類があります。食べ物だけでなく、調味料やお茶、お酒なども豊富です。代表的なものを種類別にご紹介します。

  • 調味料……味噌、醤油、みりん、酢、コチュジャン、豆板醤など
  • 穀物加工品……パン、納豆、豆腐よう、臭豆腐など
  • 茶……紅茶、烏龍茶、プーアル茶など
  • 酒……ビール、ワイン、ウイスキー、ウォッカ、テキーラ、日本酒、焼酎、酒粕など
  • 酪農製品……ヨーグルト、チーズ
  • 野菜果実加工品……漬物、ぬか漬け、キムチ、ザーサイ、ザワークラウト、ピクルス、タバスコ、バニラ、ナタデココなど
  • 魚介類加工品……かつお節、塩辛、くさや、熟鮓、魚醤、アンチョビなど

発酵食品の具体的な効果

これほどまでに発酵食品の種類が豊富になったのは、効果的なメリットが多く存在するからです。「発酵食品の効果」を5つご紹介しましょう。

1.保存性が上がる効果

発酵菌が繁殖してその勢力が保たれている食品には、基本的に腐敗菌は増殖しません。 乳酸が生成されることによって食材に酸のバリアが張られ、腐敗菌を寄せ付けることを防いでくれるのです。食品の長期間保存を可能にしてくれる効果があります。

2.栄養価が高まる効果

発酵の過程で発酵菌の排泄物や代謝物である酵素やアミノ酸、ビタミン類などが加わることで栄養価が高まる効果があります。また、ガンの抑制や成人病予防など、現代人が抱える病気の予防にも効果があることが近年の研究により分かってきています。

3.おいしくなる効果

発酵菌の働きにより分解され、生み出されるアミノ酸などが「旨味」 を、でんぷんから糖などの「甘味」、「香り」などが添加されて風味豊かな味わいになる効果があります。

4.吸収率が上がる効果

発酵による微生物が生成する酵素の働きによって、タンパク質やでんぷんが分解されます。栄養素が吸収されやすくなり、胃腸の負担も軽減するのです。本来人間の体内にも消化酵素などは存在しますが、発酵食を取り入れることにより、さらに吸収率が上がる効果があります。

5.腸内環境改善効果

発酵食品には、善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」である、食物繊維やオリゴ糖が多く含まれていて、腸内環境の改善に効果があります。また、発酵食品に含まれる発酵菌 (微生物)の菌体自体も腸内細菌のエサとなりますよ。(※4,5)

発酵食品の効果的な食べ方

さまざまな効果がある発酵食品ですが、その効果をより得るのに、ぴったりな食べ方があります。発酵食品を摂取する際にはぜひ、意識してみてください。

食べるタイミング

ヨーグルトに多く含まれるビフィズス菌は、胃酸に弱いのが特徴。生きたまま腸に届けるには、胃酸が多く出る空腹時を避けるのが効果的です。

また、腸がもっとも活動するのは起床から15〜19時間後とされているので、夕食後にヨーグルトを食べることで、寝ている間に乳酸菌やビフィズス菌が働いて、腸の運動を活性化してくれますよ。ただし、寝る前の食事は睡眠の質を下げるので、就寝の2時間前には食べ終えるのが理想です。

効果を引き出す食べ方

発酵食品に含まれる、乳酸菌などの微生物のうち、生きて腸に到達できるものを「プロバイオティクス」と言います。また、その栄養源となりプロバイオティクスを増やすものを「プレバイオティクス」と言います。

このことから、発酵食品はプレバイオティクスを含む食品と食べるのが効果的です。両方を組み合わせることを「シンバイオティクス」と呼びます。

食品成分としてはオリゴ糖や食物繊維。具体的には、ナッツ類・バナナ・きな粉・はちみつ・アロエ・ナタデココ・オートミール・大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガスなどの食品が挙がります。お好みの組み合わせで、おいしく効果を得ましょう。(※5)

発酵食品のデメリット

よい効果が多く、メリットばかりの発酵食品ですが、デメリットもあります。摂取のし過ぎには注意が必要で、摂りすぎると逆に腸を痛めることも。

例えば、毎日ヨーグルトを食べることがデメリットではありません。1日の摂取量の目安(ヨーグルトであれば100~200g)を守り、食べ過ぎることなく毎日続けるのが理想です。

また、乳製品の発酵食品を摂りすぎると、トッピングのフルーツや甘味料によって糖質や脂質の摂取が多くなる場合があります。体内に取り込んだ乳糖を消化できない乳糖不耐症の方も注意しましょう。効果を期待して続けるのに、デメリットとなってしまっては意味がありませんよね。 さらには、SIBO(シーボ)と呼ばれる小腸内細菌増殖症という病気もあります。小腸内の細菌が急激に増殖し、豊富な栄養を分解して多量のガスを産生してしまう疾患です。この疾患に罹っている方には、発酵食品がデメリットとなります。小腸内の雑菌を増殖させないよう摂取食材の制限を行うなどの治療がありますので、医師と相談していただくことをおすすめします。(※6)

適度な摂取で発酵食品を毎日摂ろう

発酵食品の効果やメリットは、目に見えてすぐに出るものではありません。毎日続けることが大切です。
かといって、摂り過ぎはデメリットとなることがありますので注意。無理をせず、適度な摂取量を毎日続けるようにしましょう。

参照:

※1 古代エジプトでは、ビールは神様への捧げものであった|キリンビール大学|キリン
https://www.kirin.co.jp/alcohol/beer/daigaku/HST/hst/no45/

※2 世界のワイン史|これでバッチリ!ワインの基礎知識|ワインアカデミー|キリン
https://www.kirin.co.jp/alcohol/wine/wine_academy/knowledge/region/history.html

※3 最古のワイン醸造施設跡 アルメニアで米チーム発見:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1200O_S1A110C1CR0000/

※4 発酵食品の効果とは?免疫アップや疲労回復など想像以上の発酵パワー|楽しむ・学ぶ|養命酒製造株式会社
https://www.yomeishu.co.jp/health/3892/

※5 腸内細菌と健康|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

※6 小腸内細菌増殖症 SIBO(シーボ)について|ドクターコラム|新百合ヶ丘総合病院
https://www.shinyuri-hospital.com/column/column_202104.html

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